日本土地建物の視点

CATEGORY#2日本土地建物が
生み出す価値
Theme1

京橋を、より安全で魅力的な街に。
ブレない想いで施設と街を育てていく。

タウンマネジメント

西村 善博

2009年入社
資産マネジメント第二部

※所属は取材当時のものです。

働きやすく、賑わいがあり、
安心・安全を備えた、
「東京で、いちばん心地のよい居場所がある街」

中央区の「帰宅困難者一時滞在施設」に指定されている「京橋エドグラン」。大規模災害時には一時待機スペースに数千人の帰宅困難者の受け入れを想定している。当然、受け入れ施設としての機能や設備は整っており、受入時の施設運営マニュアルも用意されている。一方で、西村は一抹の不安を感じていた。
「当社にとって、帰宅困難者一時滞在施設に指定されたのは京橋エドグランが初めての事例。誰も経験がありませんでした。大規模災害が発生した場合は、施設管理者や警備会社などとともに、その対応に当たらなければなりません。設備やマニュアルが整っているというだけで『いざという場面で適切な判断ができるだろうか』と。」
その不安を解消するためには、大規模災害を想定した「訓練」の実施が急務。西村は、日土地では前例のない訓練を主導することを決意した。
西村が初めて京橋エドグランに携わったのは、着工よりも前のこと。事業推進担当として京橋エドグランのブランディングに携わったことから、竣工後もタウンマネジメント業務(TM)を任されることとなった。TMとは、イベントや情報発信などの施設運営によって、施設の魅力を維持・向上させる仕事だ。それがテナント誘致や商業店舗の売上増加、施設の資産価値向上につながり、地域の活性化にも貢献できるのだ。
「TMといえば、イベント開催などを主導するイメージが先行すると思います。実際、京橋エドグランでも、大階段を利用した音楽ライブやマルシェなどの多様なイベントを定期的に開催しており、京橋の地で約半世紀途絶えていた『盆踊り』の復活を地域の方々とともに実現させたりもしました。しかし、それだけでは不十分。やはり施設のマネジメントそのものも大切です。我々が目指すのは、『東京で、いちばん心地のよい居場所がある街』。そのために、地域の安心・安全にも貢献していく必要があるのです。」
帰宅困難者受入対策の訓練は、西村にとって早期にやり遂げたいものだった。

自分1人で進めても意味がない。
それに気づけた“第三者からの評価”

大きな災害はいつ起こるかわからない。少しでも早く訓練は行いたい。その思いは関係者全員が共有しているものの、なかなか実現に踏み出せなかった。それは、なぜなのか――。
「竣工前から、中央区帰宅困難者支援施設運営協議会が行う勉強会や、他施設で実施された訓練などに参加していたので、訓練自体がどのようなものかは知っていました。しかし、それを自分たちの施設で行うとなると別の話。施設管理業者や警備会社、権利者などを巻き込んで進めていかなくてはなりません。やらなくてはならないという認識は共有していても、何をどこまでやるべきかは関係者ごとに考えが異なっており、なかなか話が具体化しなかったのです。」
いっそのこと自分ですべての段取りをつけてしまい、「こうします」と強引にでも進めてしまおうか。西村がそう考え始めたときに、転機が訪れた。
「たまたまそのタイミングで参加した社内研修で、上司や同僚などから自分を評価してもらう機会がありました。私自身の自己評価と見比べることで、今後どこを伸ばし、どこを改善すべきかが見える化できたのです。」
そこで見えてきた評価は、“推進力や課題認識力は強いが、周囲に働きかける力が弱い”というものだった。そんな第三者からの忌憚ない評価は、西村にとって納得できるものだったという。
「まさに当時の状況が、そのまま当てはまっていました。自分ひとりで訓練の段取りをつけることは可能です。でも、それでは関係者の訓練にはなりません。関係者一人ひとりが自ら関わることで、自分事として捉えることができるし、そうでなければ意味がないと改めて気づかされました。」苦労は多いかもしれないが、それでも周囲を巻き込み、時には相手に任せながら進めていこう。西村は覚悟を決めた。

強固なチームでプロジェクトを推進。
関係者全員が自分事として捉えるために。

方向性を見定めた西村の行動は早かった。関係者が実現に踏み出せなかった理由のひとつが、初回から外部の協議会を呼んで本格的な訓練をすることへの不安だった。そこで、初回訓練については施設関係者だけで開催することを提案。関係者の心理的ハードルを下げ、機運を高めることに成功した。さらに、関係者に対して小さなゴールを提示し、一つ一つ実現できることを積み上げるとともに、任せられる部分は任せることで、周囲も積極的に動いてくれるようになった。気が付くと、訓練の段取りは一気にできあがっていた。
「訓練当日は帰宅困難者役として、当社グループ内から約40名の社員が協力してくれました。何人かには、『突然の腹痛を訴える』『言い争いをする』といった特殊なシナリオを渡して、実際に発生し得るトラブルに運営者役が適切に対応できるような訓練にしました。このシナリオ作りをすることで、数々のシミュレーションが出来たことは運営や行動計画の改善に役立てたと思います。」
トラブルへの対応方法は予め関係者に伝えていたが、それぞれが現場で臨機応変に行動するなど、思った以上の成果を出すことができた。西村にとって一番の収穫は、関係者からのフィードバック。訓練に関わったほぼ全員から、びっしりとコメント付きでアンケートが戻ってきた。
「なかでも印象深かったのは、『まだまだ受動的だった。次回はもっと能動的に動きたい』というコメントです。関係者全員が自分事として能動的に動いてもらうことを目指したので、その言葉は嬉しかったですね。」
アンケートには、次回に向けた課題への指摘やその打開案までもが数多くコメントされていた。1人で進めていたら、こうしたコメントは得られなかったかもしれない。初めての訓練は、西村自身をも大きく成長させた取り組みとなった。

ともに歩んできたデベロッパーだからできる。
ブレないタウンマネジメント。

初回訓練を無事成功させ、確かな手ごたえを感じた西村たちは、続けて協議会による本格的な訓練も実施した。外国人の受入訓練も盛り込み、災害時に日本語がわからない人とのコミュニケーション方法などを検討した結果、新たな課題も発見され、有意義な訓練となった。
「訓練は1、2回実施しておしまいではありません。継続することでチームのノウハウを積み、個々人の対応スキルを上げていくことができます。今後も定期的な訓練を重ねて京橋に訪れる人を含めた地域の皆さんに安心・安全な街だと感じてもらいたいですし、それが街や施設の魅力につながっていけばと思います。」
西村がTMを担当するうえで、改めて考えるのは、デベロッパーがまちづくりを推進する意味だ。まちづくりにおける関係者は多く、それぞれの立場も異なり複雑だ。関係者が増えれば、それだけ「やりたいこと」や「進むべき方向」はブレやすくなる。そのなかでデベロッパーとしてするべきこと、できることは何か。そこに、グループ企業理念として「ともに考え、ともに創る」を掲げる日土地の役割がある。イベント開催を専門業者に一任する施設も少なくないなか、京橋エドグランでは、そのほとんどを日土地の社員が中心となって企画し、権利者の意見も取り入れながらともに創り上げていく。
「私たちが大切にしているのは、関係者や地域の方々の“想い”です。京橋エドグランは、『この街を、より安全で魅力的な街に生まれ変わらせ次世代に繋いでいきたい』という権利者たちの熱い想いからスタートしました。この想いはそのまま、京橋エドグランのブランディングに引き継がれています。『こんなイベントをしてみたい。あんなことをやってみたい』というアイデアは欠かせませんが、ブランドイメージと異なっていたり、当初の“想い”から離れてしまっては本末転倒。みんなが同じ方向を目指して進んでいけるよう手助けするのが私たちの役目です。」
50年、100年続く街の賑わいや安心・安全を生むためのアイデアを、チーム一丸となってこれからも生み出していきたい。西村はそう願っている。

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