CRE最前線!

2015/10/15 UP

シニア対応のCRE事例

3. 高齢者施設の種類

高齢者向け施設の種類は、サービスの受け方の違いから分類すると、大きく分けて二つあります。有料施設で介護などのサービスを受ける【入所施設タイプ】(要介護1 ~要介護5程度)、訪問介護などを必要に応じて受ける【賃貸住宅タイプ】(健康、要支援1 ~要介護1程度まで)。これらの詳細については図表4、5のとおりです。

図表4 入所施設タイプ
図表5 賃貸住宅タイプ

4. 当社でのCRE事例

ここからは当社の事例として、入所施設タイプの介護付有料老人ホームと賃貸住宅タイプの高齢者向け優良賃貸住宅への取組みについてご紹介します。

(1)介護付有料老人ホーム

① 開設に向けた体制整備

入所施設タイプの介護付有料老人ホームについては墨田区における岡部株式会社(東証1部、以下「岡部」という)の元オーナー家である岡部家の資産管理会社である亨和興業株式会社様(以下「亨和」という)への取組みについてのご紹介です。

介護付有料老人ホーム

岡部は1917年に創業者岡部蜜乃助による、ボルト、ナット、カスガイ、その他一般建築用金物の製造ならびに販売を目的とした個人事業にはじまります。

本件では、東京スカイツリーが立地する押上駅から徒歩6分の岡部の旧本社ビル跡地(亨和所有)に「介護付き有料老人ホーム」計画を提案し、本年2015年7月に竣工したものです。本計画において事業コンサルティングとプロジェクトマネジメント業務を「CREコンサルティング部」、設計・施工を「日土地建設」が担当しました。

本件は2012年10月に当社CREコンサルティング部に対し、47年経過した旧本社ビルの有効活用の依頼を受けスタートしました。岡部は1917年創業以来、建設関連製品のコア事業を通じて「安全・安心の提供を通じて社会に貢献する」ことを経営理念の第一に掲げており、岡部と亨和からの依頼に対し、事業内容・社歴、社会貢献活動(CSR)についてヒアリングさせていただきました。さらに周辺地域を分析し用途を決定しました。

同地域の用途は特別工業地域でありながら、マンション等の住宅が増加しており住宅移行地と判定しました。周辺地域の状況や画地の規模等から鑑みるとマンション等の共同住宅として利用することが妥当と考えられます。他方、同区では高齢者が今後増加すると予測されていますが、それに対応する高齢者施設が不足しているという現状があります。これに対応すべく、同区では老人ホーム等の施設を拡充させていくと予測し地元へのCSR活動の一環として当社は有料老人ホームを提案いたしました。

老人ホームは健康型等と介護付き有料老人ホームがあります(図表4、5参考)。特に“介護付き”有料老人ホームを開設する場合には、各自治体で総量を規制していることから、特定施設枠(許認可)を取得する必要があります。

今回の案件は、土地の所有者である亨和より土地の賃貸を希望とのことでした。そのため、当社は、建物所有者(ホルダー)と、介護の運営事業者を決定し、特定施設枠取得に向けた体制を整えて、東京都と特定施設枠取得にむけた事前協議を開始する必要がありました。

建物所有者については医療モールなどを多く展開しているなど実績があり「建物まるごとリース」という商品を展開するリース会社を採用いたしました。次に運営事業者の選定については城東エリアで多くの実績がある医療法人系の運営会社を採用しました。以上を踏まえて特定施設枠の取得にむけて2013年1月に事業推進の基本合意となりました。

なお、今回のスキームは以下のとおりです(図表6)。今回は介護保険法に基づく「介護付有料老人ホーム(特定施設)」を設置することから施設入居者保護の観点から行政サイドより長期安定的な運営を要求されます。そのために借地に当たって「事業定期借地」は認められておらず、「期限の定めがない普通借地」が一般的です。土地所有者の要望で期限の定めを求められたことから「50年の一般定期借地権」を設定しました。

図表6
② 特定施設枠取得後の動き

2013年11月に土地所有者と運営会社と建物所有者の三者が経済条件と基本プランを合意できたことで案件が動き出しました。

旧本社は敷地境界近くまで建物が建てられていたため、プランの検討にあたっては周辺環境に調和した敷地に余裕をもたせるような建物として、開放感を出すようにしました。側面道路は42条2項道路(建築基準法上の道路で幅員4m未満)となっているため、自動車と歩行者が交差しにくくなっていることから入口部分をピロティにして安全対策にも配慮しました。

また、ピロティは雨宿りや井戸端会議ができるスペースとなるほか、スポーツジムをイメージしたデイサービスエリアをゾーニングすることで地域との一体感が生まれるような計画にしています。

外観デザインは老人ホームという意匠ではなく、お客様に泊まっていただくホテルのような施設を目指して計画しました。

ポイント

・土地所有者より土地貸しの要望
建物リーススキームの提案。
土地所有者の空室リスク低減。
・リース会社を借地人として建物の建築と所有
老人ホームの運営会社を建物テナントとすることで、運営会社の建物投資を回避し、老人ホーム事業の早期安定を図った。
・借地の返還時期
期限の定めのある50年間の一般定期借地権。
・CRE戦略支援先コラボ
建築金物は岡部製品を積極的に採用。
利害関係が異なる土地所有者・建物所有者・運営会社三社の初コラボを実現。
・建物コンセプト
東京スカイツリーが近く、近隣にも配慮したランドスケープデザインとし内外装のデザイン監修はフィールドフォーデザイン事務所にご協力いただいた。

(2)高齢者向け優良賃貸住宅

賃貸住宅タイプの高齢者向け優良賃貸住宅については、千代田区神田紺屋町における株式会社ベスト様への取組みと中央区銀座における銀座不動産株式会社様への取組みについてのご紹介です。

① ベスト様への取組み

千代田区神田紺屋町で株式会社ベスト様(以下「ベスト」という)に対し高齢者向け優良賃貸住宅をご提案させていただいたのは初のCRE 戦略支援となった案件です。

建設地は、神田駅から徒歩4分の好立地で、高級建築金物メーカーであるベストの旧本社ビルがありました。本社機能の移転により遊休地となった跡地の活用に当社が「高齢者向け優良賃貸住宅」の計画を提案し2012 年12月に竣工したものです。

高齢者向け優良賃貸住宅とは、バリアフリーなどの住宅の質を確保するとともに、緊急通報、安否確認、生活支援などの見守りサービスを提供し、60歳以上の高齢者が適切な家賃で入居することができる優良な民間賃貸住宅です。国、東京都、千代田区の制度や指導のもと、優れた住宅計画であることを条件に千代田区が選定し東京都が認定、建設します。事業者に対して工事費などの補助金の他、入居者が月額最大4万円の家賃補助が受けられるため、高齢者にとって理想的な賃貸住宅となっています。

同社の旧本社ビルの跡地は当初、隣接地と一体的に共同ビルを建設し賃貸事業を行う構想でしたが頓挫しました。また周辺の地域は、中小のオフィスビルが多く、空室が目立つビルが多くなっていました。そのため、当社は空室率が目立つオフィスビル建設よりも地区計画により容積割増が受けられる住宅の方が最有効使用となる判定を行いました。そのほか、「社会貢献になり得る活用」、「地元高齢者が多い」という同社の意向と本業が「バリアフリー製品」をも提供する建築金物メーカーであることを鑑み、「高齢者向け優良賃貸住宅」のご提案をしたものです。

建築金物メーカーである「質の高い各種製品や手摺りなど」本業を生かした高齢者向け賃貸住宅となりました。

本件のポイントとしては次のようなものが挙げられます。

本件については、助成金申請作業や運営会社の斡旋を含む総合的なプロジェクトマネジメント業務に加え、当社グループで既存建物の解体、設計、新築工事を受託することで、プロジェクトをスピーディに推進することができました。

ポイント

・周辺に高齢者向け住宅なし
高齢者向け住宅とすることを提案(ペット同居可)
・住宅にすることで容積割増あり
住宅にすることでより高度な利用が可能となることを提案(容積率480%→700%)
・高齢者向け住宅への助成金あり
東京都からの助成を建築費の一部とすることができる。
・企業価値向上
本業「バリアフリー製品」採用と「地域貢献(CSR)」を両立。
ベスト様への取組み
② 銀座不動産様への取組み

中央区銀座で銀座不動産株式会社様(以下「銀座不動産」という)に対して高齢者向け優良賃貸住宅をご提案させていただいた案件です。本年2015年4月より入居が開始されました。

同社は以前銀座2丁目に商業ビルを建築するプロジェクトを推進させていただき、懇意にさせていただいているCRE戦略支援先です。

今回の対象地が創業地であり、「地域貢献になり得る活用」という事業者の思いから、社会貢献度の高い「東京都高齢者向け優良賃貸住宅」を提案いたしました。

今回のプロジェクトについては、ベスト神田紺屋町計画を見学いただき、銀座不動産よりプロジェクトの承認をいただきました。

本件のポイントとしては次のようなものが挙げられます。

今回は、中央区銀座1 丁目というアドレスが話題となり、多数の応募をいただき竣工直後高稼働率となるなど、入居者及び同社にもご満足頂きました。

ポイント

・「事業用資産の買換え特例(いわゆる「9号買換え」)」を適用して、本件の事業費へ
・銀座エリア初の高齢者向け優良賃貸住宅
銀座アドレス及び初の高齢者向け住宅とし、さらにペット同居可とすることで、訴求力の高いプランを提案。
・高齢者向け住宅への助成金あり
東京都からの助成を建築費の一部とすることができる。
・CRE戦略支援先の各社コラボ
本PJでは「バリアフリー製品」を(株)ベスト社製品を採用。
ヤマト運輸の本社が近く入居者の引っ越しは、繁忙期の中、同社グループの全面協力のもと“高齢者ホーム入居サービス”を提供。
銀座不動産様への取組み

5. まとめ

CRE戦略では、国内外の各種経済情勢、周辺における環境要因、企業の財務内容・立地条件などを総合的に勘案し、不動産個別の課題を解決するとともに、企業経営においても全体最適の観点から、“企業価値”が向上する戦略を検討する必要があります。“日土地のCRE戦略支援”では一時的・一過性の視点にとらわれず、さまざまな事象を検証し、全体最適となり得る施策をお客さまと協働し、付加価値を創造してまいります。

( レポート:不動産鑑定士 吉岡 宣行)

トピックスNEWS

国内の少子高齢化と合わせて同時進行する空家問題も対策を講じなければいけない喫緊の課題となっています。本年2月26日に空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26 年法律第127 号)が施行されました。そのような中、CRE 戦略支援先企業オーナーより祖母から遺贈を受けた都内屈指の高級住宅分譲地内の空家(土地100 坪)の活用提案の依頼を受けました。

参考文献:内閣府 「平成26年版高齢社会白書」/
平成26年2月 衆議院調査局 国土交通調査室 「高齢者等の安心な住まいについて」/東京都高齢者保健福祉計画(平成27 年度~平成29 年度)

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