CRE最前線!

2015/10/15 UP

シニア対応のCRE事例

2. 高齢者施設の現状

核家族化や長寿命化により単身や夫婦のみの単独高齢世帯数が増加するなかで、わが国の高齢者向け住宅政策が転機を迎えています。そもそも高齢者が入居できる賃貸住宅の絶対的な不足が指摘されてきたことに加え、有料老人ホームや高齢者専用の賃貸住宅をはじめとする従来の高齢者向け住宅について、入居一時金の返還を巡る金銭トラブルや制度の複雑さ等の問題が指摘されていたためです。これに対し、政府は2011年10月にサービス付高齢者向け住宅制度を創設し、高齢者人口の3~5%を目標に供給を増やす方針を打ち出しています。

高齢者の中には有料老人ホームなどの居住系施設で生活している人もいますが、全体としては9割以上の高齢者が住宅で生活しているのが現状です。また要介護認定を受けている高齢者についても8割以上が在宅で介護を受けている状況にあります(図表2参照)。

平成22年国勢調査により(図表3)、住宅に住む 65歳以上世帯員のいる一般世帯(1,933万8千世帯)の割合を住宅の所有関係別にみると、持ち家が82.5%と8割以上を占めて最も高く、次いで民営の借家(10.1%)、公営の借家(4.8%)、都市再生機構(UR)・公社の借家(1.7%)、給与住宅(0.3%)、間借り(0.7%)となっています。これを住宅に住む一般世帯全体と比べると、持ち家の割合が高く、民営の借家の割合が低いことがわかります。高齢夫婦世帯についても同様の傾向があり、持ち家の割合が 87.3%と 65歳以上世帯員のいる一般世帯よりも高い状況となっています。 その一方で、65歳以上の単身世帯(65歳以上一人暮らし世帯)では、65歳以上世帯員のいる一般世帯に比べ、持ち家の割合が64.0%と低く、逆に民営の借家の割合が22.3%(約106 万世帯)と高くなっています。中でも、男性の単身世帯は、民営の借家に住む割合が34.2%と3割を上回り、住宅に住む一般世帯全体に比べ高くなっています。

このほか、公的賃貸住宅についてみると入居者の高齢化が進んでおり、公営住宅では入居者のうち 44.1%が高齢者となっています。またUR賃貸住宅では平均世帯主年齢は年々上昇しており、平成22年の定期調査において平均世帯主年齢が 56.8歳、世帯主の約35%が65歳以上となっています。このような状況から、URなどが高度経済成長期に整備した団地では、今後急速に高齢者が増加することが見込まれており、こうした団地をモデルとした高齢者の安心な居住環境整備の実施が求められています。

2011年4月、高齢者の居住の安定確保を目指して“高齢者住まい法”が改正されました。その背景は、下記のとおりです。

図表2 高齢者の居住の場
図表3 住宅の所有の関係別住宅に住む一般世帯の割合

(1)従来の高齢者向け住宅

従来の高齢者向け住宅としては、①高齢者向け優良賃貸住宅、②高齢者専用賃貸住宅がありました。

① 高齢者向け優良賃貸住宅

2001年度に「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づく制度として位置付けられた「高齢者向け優良賃貸住宅」(高優賃)の制度は、良好な居住環境を備えた高齢者向け住宅の供給促進のため、一定の基準を満たす高齢者向けの賃貸住宅を供給する者がその計画について都道府県知事の認定を受けると、整備費や家賃の減額について補助を受けることができる制度でした。

② 高齢者専用賃貸住宅(高専賃)

高齢者の入居を拒まない「高齢者円滑入居賃貸住宅」(高円賃)のうち専ら高齢者を受け入れる賃貸住宅として、「高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則」に基づき2005年から施行されたもので、一定の基準を満たす場合に、戸数、規模や提供されるサービスに関する事項を都道府県に登録すると情報が開示されました。また、一定の要件を満たす場合には、有料老人ホームとしての規制が及ばず、適合高齢者専用賃貸住宅の届出をした住宅は、介護保険法の特定施設入居者生活介護の対象施設となりうるものとされていました。

ただしこれらの施設については違いが分かりにくく、情報提供体制が整備されていないため問題が指摘されていました。

(2)高齢者向け住宅の現在の方針

近年の高齢化の急速な進展にもかかわらず、我が国では高齢者に適した住宅が絶対的に不足している状況にあることなどから、2011年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律」の改正が行われ、新たに「サービス付高齢者向け住宅」制度が創設されました。これにより上記に記載された高齢者住宅の一本化を図りました。

この「サービス付高齢者向け住宅」は、バリアフリー化された構造で一定の面積、設備を有するなど、高齢者にふさわしいハード面の仕様を有するとともに、高齢者ケアの専門家による安否確認サービスや生活相談サービスなど高齢者が安心して生活するための見守りサービスを備えることが条件とされており、これらの条件を満たすものを都道府県・政令市等が登録し、家賃やサービスなどの情報開示を行って高齢者のニーズに応じた住まいの選択を可能にしようとするものです。

また、政府としても高齢者が安心して暮らすことができるサービスなど、住生活の安心を支えるサービスが地域において提供され、こうしたサービスをニーズに応じて受けることができるための環境の整備を図るため次のような目標を掲げています。一つは高齢者の安定した住まいの確保のため、高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合を2005年の0.9%から2020年までに3 ~ 5%とする方針。もう一つは地域における福祉拠点等の構築として生活支援施設を併設している公的賃貸住宅団地(100戸以上)の割合を2009年の16%から2020年までに25%とする方針も掲げています。

そのため、医療・介護・住宅が連携し、高齢者が安心できる住まいを確保するためにも、サービス付高齢者向け住宅の供給を促進しようとしています。

なお、東京都では高齢者の住まいとして次のような対策を図っています。

上記のとおり2011年にサービス付高齢者向け住宅の創設以後、都内では2015年3月1日時点で15,886戸サービス付高齢者向け住宅が供給されました。高齢者単独・夫婦のみ世帯が急激に増加している現状を踏まえ、引き続きサービス付高齢者向け住宅等の供給促進が求められており、2025年度末までに28,000戸を目標としています。

(3)高齢者向け住宅の質の確保

サービス付高齢者向け住宅は、高齢者住まい法では状況把握(安否確認)などの生活支援サービスの提供が必須とされていますが、緊急時対応サービスは必須とされていません。また、日中はケアの専門家が建物に常駐することとされていますが、夜間に職員が常駐することまでは必要とされていないことから、夜間の災害時等に職員の常駐する福祉施設と比べると不安が残る点もあります。

また、東京都ではサービス付高齢者向け住宅のうち、介護保険サービス事業所と連携している住宅は全体の78.9%、診療所や訪問介護ステーションなどの医療サービス事業所と連携している住宅は78.1%、介護保険サービス事業所又は医療サービス事業所と連携している住宅は91.2%となっており、多くの住宅が、医療・介護事業所と連携している状況です。ただし、緊急時対応に係る協力等にとどまる住宅もあれば、定期的なミーティングやITシステムを活用した情報共有等綿密な連携を行っている住宅もあり、連携の状況は住宅によって異なります。一方で、住宅の入居者の平均要介護度は、2013年10月現在1.61となっており、住宅における医療・介護連携の質の確保と向上が今後ますます重要となることが想定されます。

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