CRE最前線!

2015/04/15 UP

CRE事例紹介

2. きっかけ

川島株式会社様は、本業の和紙を利用したインテリア資材の販売以外にも日本橋小伝馬町駅至近に本社兼賃貸のテナントビルを所有していました。当該建物が旧耐震ビルであったことから、市況の悪化や環境の変化、東日本大震災を契機とした耐震性の低いビルに対する信頼性の低下に伴い、空室が目立ち始め、ついには全室空室になるという悪循環に陥っておりました。

そこで、事業の立て直しとともに、旧耐震ビルに対する対応、本社ビルをいかに活用していくかといった今後の環境変化への対応が必須となったことから、弊社を含めた数社に相談をし、比較検討の結果、弊社の提案である「都市型ホテル」への建替えを採用頂きました。

弊社の提案は、詳細な環境分析と物件の個別分析および財務分析をもとに、現状とりうる最適な方法を導き出すという手法をとっています。以下弊社の提案のベースとなった各分析のうち、特に読者の皆様にも共通する環境分析につき少し詳しく触れ、今回の提案となった背景をご説明いたします。

(1)市場動向 

企業業績の回復を背景に、不動産取引や本社移転などが増加、“攻め”のCRE戦略が多く見られます。表のとおり、2011年を底としてその後、売買による所有権登記件数は上昇基調となっています(図表1)。2014 年もその傾向は続いており、都心部や生産・物流適地等については、売買件数の増加とともに地価が上昇していますが、一方で地価反転のきっかけのない地域も多くなっています。

図表1 売買による土地所有権移転登記件数

次に、2014年の基準地価では、景気の緩やかな回復を反映し、三大都市圏の上昇傾向が鮮明になる反面、地方圏では調査地点の8割にあたる地点で地価が下落しています。人口減が進む地域で地価の反転の糸口が見えず、全国平均でみると地価の下落基調は続いています。

一方で、東京、大阪などの都市部では、景況感の改善により、2013年は年間を通して、大企業を中心にベースアップの動きや賞与が増額されたことを背景として、住宅購入を前向きに検討する人たちが増えました。更に、消費税増税を控えた駆け込み的な動きが見られ、利便性の高い都市部を中心に不動産への需要が増加しました。

東京都では、全用途で上昇し、千代田、中央、港の都心3区の伸びが際立っています。景況感の回復に加え、2015年の相続税増税を控えて富裕層の買い意欲が高まったことや円安によって外国人投資家が積極的に不動産取得に動き出したこと、2020年の東京オリンピックを控え再開発の機運が高まっていることが背景にあります。マンションや商業施設などの用地取得が活発化したこともあり、中央区では勝どきや佃など前年比上昇率が10%を超えた地点もあります。需要の高まりをにらんで大規模開発が相次ぎ、一部の土地価格だけが上昇する「二極化傾向」がより鮮明になりました(図表2)。

ただし、消費税増税により消費が弱含むなど今後の懸念材料となっております。

図表2 市街地価格指数

(2)建築費について 

建設現場で実際に手を動かす職人の人手不足によって需給バランスが崩れ、職人の労務費は上昇し続けています。それが建設コストの上昇につながり、建設工事が前に進まない事態が続出しているといわれています。

建築費は2012 年以降全般に上昇しており、2013 年、2014年と更に上昇傾向が強まっています。中でもRC(鉄筋コンクリート)造の上昇幅が大きくなっています(図表3)。主な都市別では、震災復興事業等に伴う建築需要の影響もあって仙台市で大きく上昇しているほか、東京の上昇幅も大きくなっています。

図表3 建築工事費の推移(RC ホテル)

建築費が上昇しているのは、労務費と資材価格の上昇が主な原因で、その背景には型枠工等の技能労働者の不足、円安による輸入資材等の価格上昇、建築工事の受注増加などが挙げられます。

建設業の就業者数は1997年の平均685万人をピークに減少しており、直近の2013年は平均499万人でピーク比186 万人減となりました(図表4)。東日本大震災の復旧・復興工事が始まった2011年以降は鉄筋コンクリートの躯体工事に必要な型枠工や鉄筋工の不足感が強まっており、2011年初めから型枠工の賃金は大幅に上昇したとされています。

さらに、建設業就業者数が減少する中で、建築工事をはじめ工事受注額が急増しており、建設需給のひっ迫を促す要因となっています。

図表4 建設業就業者数

(3)環境変化への対応 

建物の既存ストックとして、戸建以外の建物が1,400万棟以上(総務省:固定資産の価格等の概要調書による)あります。また、建物の耐用年数は50年程度、設備の耐用年数は15年程度であるといわれています。建物は、築年の経過とともに劣化していくため、将来的には建替え、改修、修繕などを行っていく必要があります。そのため、随時維持管理を行い、約15年に1回大規模修繕を実施する必要があります。一方で、建物を維持するためには管理や修繕のための費用がかかります。なお、建物が建築されてから解体されるまでのライフサイクルコストは当初建築額の3 倍以上かかるとまでいわれています。

高度経済成長期以降に建築された既存建築物の中には、建替期には至っていないものの、耐震性が劣っていたり、防災施設が不十分であったりする等、安全上の問題を抱えるものも数多く存在しているものと考えられます。これらの実態を把握した上で、機能更新の機会をとらえ、経済活動と調和を図りつつ改善を進める必要があります。

建築物はフローからストックの時代を迎え、既存建築物を建て替えるだけでなく、改修等様々な手法で再生するとともに、これらを有効活用し、良質な社会ストックを形成していくことも必要となります。

また、建築当時は最有効使用だったものが、周辺環境の変化や経年劣化により、最有効使用でなくなるケースがあります。例えば建築当時は事務所適地だったのが、現在では共同住宅が増えている地域などです。こういった地域の特徴としては、オフィスビルの空室率が上昇した結果、需給バランスが崩れ、供給過多によりオフィス賃料が下がり、近隣の賃貸マンションの家賃より低くなるレントギャップが発生していることが挙げられます。採算性からみた場合、レントギャップが発生している地域は建替えやコンバージョンも含め、現在の環境に最適なプランを検討する必要があります。

(4)旧耐震ビルへの現在の施策 

1978 年の宮城県沖地震の被害を受け、1981 年6月1日に建築基準法が改正され、大幅に耐震基準が強化されました(「新耐震」基準の導入)。

その後、1995年の阪神・淡路大震災を契機として、同年に「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」が施行されました。耐震改修促進法では、旧耐震基準の建物について、積極的な耐震診断や改修を進める努力義務が明記されています。

2011 年には東日本大震災が発生。これを受け、東京都では条例を改正し、2012年4月からは特定緊急輸送道路沿道の一定規模以上の建築物について、耐震診断を義務化することとなりました。

耐震診断とは、旧耐震の建物(1981 年5月31日以前に建築確認を行った建築物)について、建物の強さ・粘り・形状・経年劣化等から、現在の耐震基準に照らして耐震性能を評価することです。

RC(鉄筋コンクリート)/SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造の建物の場合、1次から3次の3段階の診断手法がありますが、3次診断は詳細で費用も高くなります。2次診断が最も一般的です。

耐震性能は、Is値(構造耐震指標)という指標で表示され、値が大きいほど耐震性能が高くなります。2次及び3次診断の場合、Is値0.6 以上が目安です。

交付条件は各自治体により異なりますが、耐震診断には助成制度があります。

① 特定緊急輸送道路沿道の建築物の耐震化(東京都)

上記にも述べましたが、東京都では、特定緊急輸送道路沿道の建築物については耐震診断を義務化しています。緊急輸送道路は、救急救命・消火活動、物資の輸送、復旧復興の生命線・大動脈であり、沿道建築物の倒壊による道路閉塞を防ぐことは、首都機能を維持するために極めて重要と考えられています。東京都は「東京都における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」を施行し、「特定緊急輸送道路」を指定し、これに合わせて耐震診断・耐震改修等に関する助成制度も拡充しました。

② 耐震改修促進法の改正の概要
a 建築物の耐震化の促進のための規制強化

地震防災戦略において、住宅及び多数の者が利用する建築物(特定建築物)の耐震化目標を2015 年までに90%と設定しました。また、耐震化率は2008年時点で住宅が79%、特定建築物が80%となっています。南海トラフの巨大地震や首都直下地震の被害想定で、これらの地震が最大クラスの規模で発生した場合、東日本大震災を超える甚大な人的・物的被害が発生するといわれています。そのため、耐震改修促進法の改正や支援措置の拡充による住宅・不特定多数の者が利用する建築物の耐震化の促進が喫緊の課題となっています。

そこで、耐震改修促進法を2013年11月に一部改正し、要緊急安全確認大規模建築物及び要安全確認計画記載建築物については、耐震診断を努力義務から義務化し、耐震診断結果を公表することとなりました。また、指示・検査の拒否および虚偽の報告をした場合には罰則規定を創設しました。そのほか、マンションを含む住宅や小規模建築物等についても、耐震診断及び必要に応じた耐震改修の努力義務を創設しました。

b 要緊急安全確認大規模建築物及び要安全確認計画記載建築物の概要
b 要緊急安全確認大規模建築物及び要安全確認計画記載建築物の概要
c 要緊急安全確認大規模建築物について  1981 年5月31日以前に着工した以下の建物が対象となります。
c 要緊急安全確認大規模建築物について

(5)観光関連 

2013 年は、政府がビジット・ジャパン事業(以下、VJ事業)を開始してから10 周年となり、観光立国推進閣僚会議を立ち上げました。この中で、訪日外国人旅行者数1,000万人を達成するために、政府一丸となった取組みを強化する方針を掲げました。それを受けて、2013年6月、第2回観光立国推進閣僚会議において、「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」が決定されました。このアクション・プログラムの実施に政府一丸、官民一体となって取り組んだ結果、2013 年の訪日外国人旅行者数は約1,036 万人と、2012 年の約836万人から大きく飛躍し、2003 年のVJ 事業開始以来の政府目標であった訪日外国人旅行者数年間1,000万人を史上初めて達成しました。

これにとどまることなく、「2020 年オリンピック・パラリンピック東京大会」の開催を追い風として、2020 年に向けて2,000 万人を目指し、現行のアクション・プログラムを改定することで、さらなる訪日外国人旅行者数の増加を目指しています。

その中で、宿泊施設、飲食施設、案内施設その他旅行に関連する施設を整備するべく、政府は、ホテル・旅館の建物に係る固定資産評価の見直し(固定資産評価の経過年数を現行の50年から45年に短縮)などを行う予定となっています。

また、人口減少が進みつつある中、日本の旅行人口が中長期的に減少していくことは明らかです。宿泊産業界にとって、外国人旅行者、特にこれから大きな伸びが予想される個人の外国人旅行者の取り込みすなわちインバウンド対策は必須であり、外国人旅行者層に向けた効果的な情報発信が重要です。

そのため、日本政府観光局は宿泊施設経営者の意識改革、旅館ブランドの構築、多様な宿泊施設に関する情報発信を行う窓口サイトの開設に向けた検討など、今後更なる情報提供の充実策について検討しています。

(6)ホテル事業に当たって 

東京都への宿泊者数は増加(図表5)しており、今後外国人客の取り込みにより更なる増加が予想されます。近年、ホテル営業数およびホテル客室数は、大幅な増加が続いています(図表6、7)。

1989 年にホテル営業数は4,970 軒、ホテル客室数は369,011 室でしたが、2012 年度にはそれぞれ9,796 軒、814,984 室に増加しています。この客室数の大幅な増加の大半は宿泊特化型のチェーン系ホテルの新規開業によるもので、2000 年以降に開業ペースを高めています。また、東京のホテル客室稼働率は2009 年リーマンショック、2011年東日本大震災による落ち込みはありましたが、総じて高い水準を維持しています。

高稼働の背景にあるのは、ビジネス需要の回復、羽田空港国際化、東京スカイツリー等の話題性のある施設の開業による東京への観光需要の高まりなどです。一方で、景気回復に伴う土地代や建設資材価格の上昇が新設計画への抑制要因となり始めています。

図表5 東京都宿泊者数
図表6 ホテル営業数 図表7 ホテル客室数
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