CRE最前線!

2014/10/15 UP

CREから検討する中小企業の相続対策

2. 相続リスクのマネジメントの基本

前述の相続リスクを回避するためのマネジメントとして、次の4つのステップが基本となる。

ステップ1 相続財産の評価と納税額の算出

まずは、所有財産の棚卸しを行う必要がある。相続が発生した場合に、相続財産となる居住用や事業用の不動産、現預金等の金融資産、自社株式を含む有価証券等の財産を評価して、全体の相続財産の合計額を算出するとともに、居住用や事業用の不動産や自社株式のように換金が出来ない財産と、遊休不動産や上場株式のように換金が可能な財産に区分して、その価額や比率を算出する。

また、企業が不動産を所有している場合、その自社株式の評価額を算出する必要があるが、その際に、企業不動産の棚卸しをしておくとCRE戦略を行う上で、重要な情報となる。

財産の評価は、時価で行うのが、原則であるが、相続税の納税額の計算には、相続税評価額(財産評価基本通達に定められた評価方式による評価額等)で財産額を計算する必要があり、また課税価格の特例等の適用の有無も確認する必要がある。

相続税の課税価格が算出できたなら、相続税の納税額を算出し、その納税額が現預金等の金融資産もしくは売却可能な不動産や有価証券により、捻出できるかを検証する。そして、算出された相続税額が金融資産や換金可能資産で不足する場合は、相続発生時点までに生み出される収入から得られる資金の蓄財で、それをカバーすることが出来るかどうかの資金計画を検討する必要がある。さらに、生命保険等の活用で、死亡時に資金が得られる方法も検討する。それでも納税額の不足が予測される場合は、相続税を分割払いする「延納」制度の活用や、相続財産の中から現物財産で納税をする「物納」制度の活用も検討する必要がある。

また、財産の情報(物的情報)だけではなく、推定される相続人に関する情報(人的情報)も相続税の概算やステップ2の遺産分割のプランニングに必要となるため、このステップで情報収集する必要がある。

相続税を計算する上で、不動産の評価額や課税価格は、その不動産の利用状況などにより変化する。例えば、利用されていない遊休不動産よりも賃貸不動産等に利用されている方が、評価額が低くなるため、遊休(または低利用の)不動産を有効活用することで、そこから生じる収入で納税資金の確保が期待できるとともに、相続税の課税価格を低く抑えることで納税額を減らすことも可能となる。そのため、このステップで不動産の活用等のプランについても立案することが必要となる。

ステップ2 遺産分割の検証と分割案の作成

相続財産の価額と納税額の検証ができた後、その財産を相続人間でどのように分割をするかのシミュレーションを行うことが必要となる。また、遺産分割の方法によっても、課税価格や納税額が増減する場合があることから、納税額を低く抑えるための分割方法を検討する必要もある。例えば、配偶者が取得した財産の一定額までは、配偶者の税額軽減により納税額をゼロに出来る制度がある。また、居住用財産(土地)を配偶者や一定の相続人が取得した場合には、一定の面積までは課税価格の80%が減額される制度があるなど、取得する人によって、納税額を低くできる可能性があるため、その制度の活用を必ず検討する必要がある。

一方、配偶者が取得した財産の相続税が軽減されても、次にその配偶者に相続が発生した場合には、配偶者の財産を相続人である子供が取得する際に新たに相続税が課税される。これを二次相続として、将来に発生する納税額を予測した上で、配偶者が取得する財産を検討する必要がある。特に配偶者が固有の財産を所有している場合、その財産と相続財産の合計額が二次相続の財産となるため、相続税が高額に課税される場合もあるので、注意が必要となる。

遺産分割の案ができたなら、それに基づいて相続人ごとに取得した財産に対する各人の相続税額を算出し、納税が可能かどうかを検証することが必要となる。ここで行うのは、あくまでもシミュレーションであるので、複数の分割案を作成し、各人の財産の取得額のバランス、課税価格や納税額の特例の活用、納税資金の有無等について検証するが、特に事業承継者がいる場合は、事業に必要な資産や事業資金の借入れの担保に提供されている資産があれば、事業承継者が継承出来るような分割案を作成することも重要となる。このように、複数の問題点が生じた場合、どれを優先して分割案を作成するかをこの段階で十分に検討する必要がある。

ステップ3 遺言書の作成と対策の実行

遺産分割の案が出来たなら、それに基づいて、遺言書を作成することが有効である。遺言書は、相続発生後に相続人間で財産の分割を巡ってトラブルが発生することを防ぐ効果があると同時に、相続の手続きを簡素化し、スムーズな財産承継を可能とする。特に、事業承継をする場合、事業承継者にスムーズに事業用資産(自社株式や事業用不動産)が移転できるようにしておくことが必要となるため、事業承継者が決定したなら、すぐに事業用資産だけでも遺言書に記載をすることが有効となる。

遺言書には気軽に書ける自筆証書遺言や安全性の高い公正証書遺言等、一般的なものには以下の3種類があるが、その種類と特徴を理解して、財産規模やリスクの大きさにより適した種類のものを活用することがポイントとなる。

① 自筆証書遺言

遺言書の内容、日付、氏名等をすべて自筆で記載して押印する方式のため、自分一人で遺言書を作成することができる遺言形式である。しかし、必要となる一定の要件を満たしていない場合には無効になることや、遺言書を紛失したり、盗難にあったりするリスクもあるため、せっかく作成しても、その効果を発揮できない場合があるため、注意が必要である。

② 公正証書遺言

遺言書を公正証書にして、公証人役場に保管をしてもらう方式である。また2 人の証人の立ち会いのもとに公証人が書面にするため、自分で記載をする必要もなく、その効力も安定している。しかし、公証人の費用や証人の立ち会いの負担があるため、財産額がある程度高額となる場合や相続人間のトラブルが予想される場合に選択されることが多い。

③ 秘密証書遺言

遺言書の内容を公証人や証人に知られたくない場合などは、この方式を取る場合がある。これは、書面に記載された遺言内容に遺言者が署名・押印して封筒に入れて、同じ印鑑で封印をする。そして、2人の証人の立ち会いのもとに公証人に提出して、その封筒に所定の記載や署名等を公証人と証人が行う方式である。しかし、公証人の費用がかかる上、遺言書自体は本人が保管するため、紛失や盗難等の恐れがある。

以上の遺言書を作成すると同時に、ステップ1で検討した納税資金の確保対策や納税額を減少させるための節税対策の実行を行うことが必要である。また、財産の移転を相続で行うだけではなく、生前に贈与により移転することも有効な相続対策となる。相続税の負担と贈与税の負担を比較して、贈与のプランを作成して実行することもこの段階で必要となる。

そして、納税資金の確保による金融資産の変化や贈与や節税対策による財産や負債の保有状況の変化により、作成した遺言書の内容に、不都合が生じる場合がある。その場合には、遺言書の変更が必要となるため、数年毎にその検証(モニタリング)を行う必要がある。

全体の財産に占める事業用資産の比率が高くなると事業用資産を相続する事業承継者とそれ以外の相続人との間で、財産に不均衡が生じる。遺言書や贈与により事業用資産を事業承継者に移転すると事業承継者以外の相続人から遺留分の減殺請求が発生する可能性がある。そのため、遺言書を作成したり、贈与を実行したりする際に、事業承継者以外から、遺留分の放棄等の法的制限の手続きを同時に行ってもらうことも検討する必要がある。

ステップ4 高齢化対応と生前移転対策

高齢化社会になると、ステップ3までの対策を行っていても、相続の発生までに長い時間がかかる場合がある。その間に財産内容が大きく変化する可能性があるとともに、財産を承継する相続人も高齢になってしまうことも考えられる。事業承継を行う場合には、事業承継者に適切な時期に事業用資産を移転させることも必要となるため、そのようなタイミングで、税法上の特例を活用して、まとまった財産の贈与による移転等をすることも有効な対策となる。

また、財産の所有者が高齢となった場合、痴呆症や意識障害を起こす場合もある。不幸にも意思能力が無くなってしまうと、遺言書の作成はもとより、贈与や譲渡による財産の移転や納税資金の確保も出来なくなるため、意思能力が無くなってから相続発生まで時間がかかった場合、その間には積極的な対策が実行出来ないと考えざるを得ない。また、不動産を多く所有している方の場合、建物の老朽化による建替えや不動産の賃貸契約の見直し等を行う必要があるが、財産の所有者が意思能力の不能に陥っている場合、その対応も出来なくなるリスクがある。それを解決するためにも贈与等による財産移転が有効となる。

さらに、自分に介護が必要となった場合に、家族の負担をどのように軽減するか、それを考慮した財産の所有形態や分割方法も検討する必要がある。そして、自分の相続の後に、配偶者が残された場合の生活拠点や生活費、介護費用等の確保についても考慮する必要がある。

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