CRE最前線!

2010/12/8 UP

2.削減義務量の計算

削減義務量は「基準排出量×削減義務率」で計算します。「基準排出量」は、2002~2007年度の6年のなかで連続する3年間の実績排出量の平均値ですが、どの3年間を採用するかは事業者が任意に決めることができます。これは、これまで積極的に削減努力をしてきた事業者に対する優遇措置です。つまり、既に総量削減の実績がある事業所なら、排出量の多い最初の3年間の平均値を選ぶことで、削減義務量を軽減することができます。逆にいえば、「排出可能上限量(=基準排出量-削減義務量)」を上げることができるのです。なお、事業内容の変更(床面積や設備の増減など)により基準排出量の増減が6%以上となった場合には、その分を反映して新しい基準排出量が算定されます。

一方、「削減義務率」については、第一計画期間(2010~2014年度)では、工場などが6%、オフィスビル、百貨店、ホテル、学校、病院などは、地域冷暖房の利用状況に応じて6%または8%が適用されます。さらに第二計画期間(2015~2019年度)では17%程度の削減義務率が想定されていますが、その開始前までに決定されることになっています。

ただし、これまで積極的に総量削減を行ってきた事業所に対しては、不利にならないように軽減措置が用意されています。知事から「地球温暖化の対策の推進の程度が特に優れた事業所(優良特定地球温暖化対策事業所)」と認定された時には、その程度によって削減義務率が軽減されます。これには「トップレベル事業所」と「準トップレベル事業所」の2段階があり、それぞれ削減義務率が1/2、3/4に軽減されます。認定基準には、CO2削減推進体制の整備、建物の省エネルギー性能、設備・制御系の省エネルギー性能などの228評価項目(オフィスの場合)があり、前者で8割以上、後者では7割以上の合致が必要です。

削減計画期間については既に触れていますが、基本的に5年間を一区切りとし、第一計画期間、第二計画期間に続いて、それ以降も5年ごとの期間です。総量削減義務の達成状況は、各削減計画期間の終了後に報告を受けた知事が、次の1年である「整理期間」に確認します。2010年度から始まる第一計画期間でいえば、2015年度が整理期間となり、この間に削減量不足があれば排出量取引で相殺することになりますが、2016年3月末が履行期限です。

<図表3 5年間の「排出可能上限量」の考え方>
5年間の「排出可能上限量」の考え方

3.削減義務の達成手段

削減義務を果たすには基本的に自らの削減努力ですが、既存設備の運用改善による省エネ推進やエネルギー効率の良い設備・機器の導入などが考えられます。エネルギー使用量の多いボイラーや照明器具を高効率なものに替えるだけでも、相当量の削減が期待できます。ただし、自己努力でも削減義務量が達成できなかった場合には、補完的な手段として排出量取引が認められています。売却・購入できる削減量はクレジットと呼ばれ、4種類が利用可能です。一つは「超過削減量」で、あとの3つは「オフセットクレジット」と称されます。

  1. (1)超過削減量:削減義務のある大規模事業所が義務量を超えて削減した量。一定割合を超えれば翌年度から売却も可能。ただし、過大な売却益を得ないように、基準排出量の1/2を超える削減量は売却できない。
  2. (2)都内中小クレジット:都内中小規模事業所の省エネ対策(高効率給湯ヒートポンプや照明の省エネ制御設備の更新・導入など)による認定排出削減量。中小事業所の削減対策を促進する狙いもあるが、当面は都内に限定される。
  3. (3)再生エネクレジット:再生可能エネルギーの環境価値を評価するもの。「グリーンエネルギー証書」や同時・同量の託送による「生グリーン電力」の購入により削減不足分を相殺する。特に太陽光(熱)・風力・地熱・小水力による電力は、実際の1.5倍に換算される。
  4. (4)都外クレジット:都外で省エネ投資を進める大企業を想定したもので、年間エネルギー使用量1,500kl以上で基準排出量15万トン以下の大規模事業所による削減量。都内事業所は、その削減義務量の1/3を上限に利用できる。

第一計画期間中に取得したクレジットは、第二計画期間終了までは持越して削減義務量に充当することができます(バンキング)。取引価格については、売り手と買い手が定めるものとされていますが、都では参考値として15,000円/t-CO2を公表しています。これは京都議定書の国連認証クレジット(CER)や環境省の自主参加型国内取引制度の平均価格に比べて、10倍前後とかなり高い設定です。自助努力による総量削減に向けた都の意思の表れと考えられます。排出量取引の開始は、都の「削減量口座簿」(クレジットの登録、移転、削減義務への充当など記録管理の電子システム)が稼動する来年4月の予定です。

4.第三者検証と罰則

これまで排出量の報告は自己申告でしたが、基準排出量や計画期間中の排出量などの正確性を確保するために、削減義務のある事業所(所有者)は、都に登録された第三者機関による検証を受けなければなりません。都によれば、検証費用は規模要件と基準排出量で約50万円、毎年の排出量で約20万円を想定しているとのことです。

今回の改正では、削減義務量が達成できなかった場合の対応策も準備されています。まず、計画期間中に削減義務が達成できなかった事業所は、整理期間内に不足量の1.3倍にあたる削減量を排出量取引で補う必要があります。これにも違反すると、事業所名が公表され、最高50万円の罰金が科せられます。さらに都知事が不足分の排出量を代行調達し、その費用を未達成事業所に請求することになっています。全体的に厳しい罰則と言えます。

5.分かれる企業の対応

業務部門にもキャップ&トレードを適用する先駆的なこの制度では、企業側にも様々な懸念があります。都が開催したステークホルダー・ミーティングで出た主な論点と都側の対応策は以下のとおりです。

  1. (1)一律キャップの不公平:削減努力をしてきた企業が不利にならぬよう、自社に有利な基準排出量が選べる。また、トップレベル事業所に認定されれば削減義務率も軽減される。
  2. (2)床面積増減とキャップ:新築ビルを含めて、排出量の増減が基準排出量の6%以上であれば、一定条件の下で新しい基準排出量に変更される。
  3. (3)全国展開と都内事業所:全国に事業所があり全社的な削減計画をもつ企業であれば、排出量取引の「都外クレジット」を利用して自らの削減実績とすることができる。
  4. (4)排出量取引価格:取引価格の乱高下を防ぐため、削減成果は単年度ではなく5年平均で評価され、中長期的視点から計画的に取組める。クレジット供給量調整も検討されている。

もはやサイは投げられたのです。東京都版キャップ&トレードは大企業に総量削減を迫り、業務面でも財務面でも一定の負担が強いられると思います。検証費用や複数オーナーなどの課題も指摘されていますが、これを契機にリスクをチャンスに転ずることは可能です。戸惑う企業が多いなかで、不動産業を含め積極的に対応する企業もいて対照的です。首都圏の他県も導入を表明し、国もその成否を見守っています。いずれにせよ、これから到来する「キャップ経済」にどう対処するかは、企業の経営戦略として位置づける必要がありそうです。

top
  • CRE最前線!TOPへ
  • 目次に戻る
  • バックナンバー

法人のお客様へ 都市開発・不動産ソリューション・資産運用 トップ

CRE戦略支援についてのお問い合わせはこちら

  • 都市開発
  • オフィスビルのご案内
  • 開発プロジェクトのご紹介
  • 企画・開発/監理
  • 施工(建設工事・ビルリニューアル工事)
  • プロパティマネジメント
  • 不動産再生
  • 不動産ソリューション
  • CRE(企業不動産)戦略支援
  • CRE戦略とは
  • CRE戦略の必要性
  • CREマネジメントサイクル
  • M&A時代におけるCRE戦略
  • サービスのご案内
  • 戦略立案コンサルティング
  • CREXα(クレックスアルファ)
  • 賃貸等不動産コンサルティング
  • プロジェクトマネジメント
  • CRE SOLUTION Report
  • CRE最前線!
  • CRE講座
  • CRE SOLUTION Report不動産情報誌発行のご案内
  • 事例のご紹介
  • 遊休地の売却依頼に、操業中の工場売却を提案
  • 不動産価値を適正に把握することで、店舗賃料を削減
  • 遊休地に取引先の拠点を建設
  • 経営資源の観点から、不動産情報を一元管理
  • 旧本社跡地を高齢者向け賃貸住宅として再生
  • 査済証のない旧耐震建物を助成金対象へ
  • 不動産鑑定
  • 不動産仲介
  • 不動産証券化
  • 資産運用
  • 資産運用
  • 安心・安全への取り組み
  • 日土地のCRE戦略支援
  • CRE SOLUTION Report