CRE講座

2008/7/1 UP

第2回セミナー 公的資産マネジメントは官から民へ~PPP手法の動向~

前回は、弊社が実施したアンケート調査結果をもとに、自治体における財務及び資産マネジメントの現状と、自治体版CRE戦略である「PRE(Public Real Estate:公的不動産)戦略」の必要性について述べた。今回は、公的不動産をとりまく状況を概観した上で、公的不動産のマネジメントに関す るPPP(Public Private Partnership:官民パートナーシップ)手法の導入事例について紹介する。

1.公的不動産をとりまく状況

(1) 公的不動産の規模

「企業不動産の合理的な所有・利用に関する研究会(CRE研究会)報告書」によれば、企業が所有する土地・不動産は、平成15年1月1日現在 で、金額規模(時価ベース)で約490兆円、面積規模で約54,000k㎡となっている。これは、我が国における不動産の資産規模の21%に相当する規 模であり、面積規模では、国土面積の14%を占めるものとなっている。

これに対して公的不動産は、「平成19年版土地白書」によれば、平成17年度末の国有地が877.1万ha(87,710k㎡)、公有地は306.0万ha(30,600k㎡)であり(表1参照)、国土面積のそれぞれ23.2%、8.1%に相当する。資産規模については上記白書で触れられていないが、内閣府の国民経済計算によれば、一般政府部門が保有する土地の総額は平成17年末で約131兆円と推計されている。

表1 国有地及び公有地の状況(面積)

(2) 公的不動産の種類

公的不動産と言っても、それが具体的にどのような不動産を指すのかは個人によって捉え方が異なり、一言で表すのは難しい。公的不動産のマネジメントをとりまく状況を考えるに当たり、公的不動産にどのような種類があるのかを整理しておく必要がある。

不動産は一般の諸財と異なり、用途の多様性という特性を有するため、同一の不動産であっても使用方法に応じて発揮される効用や経済価値が異なってくる。そこで、「どのような目的で利用される不動産なのか」という、用途の分類概念が重要となってくる※1。

公的不動産の場合、その用途は基本的に、市民に提供される公共サービスの区分に応じて分類される(表2参照)。道路や河川のように公共インフラの性格がきわめて高い施設もあれば、住宅や病院のように民間がサービス供給を代替しうる施設もある。また、市役所や職員宿舎のように、主に行政職員の事務や居住等の用に供される施設もある。それぞれの用途や性格に応じて、資産保有の必然性や効用の度合いが異なってくる。

表2 用途からみた公的不動産の分類と主な例

(3) 所有者別の分類概念と法的制約

さらに、公的不動産の場合は、上述の用途的観点からの分類に加えて「所有者」に関する分類概念も念頭に置く必要がある(表3参照)。所有者の分類ごとに設置根拠となる法令(各府省の設置法、独立行政法人法、地方自治法、地方公営企業法など)が異なり、不動産の取得・処分に関する法的な制約や会計処理の方法が一律でないからである。

例えば、中央官庁が保有する不動産は、国有財産法の規定により行政財産と普通財産とに区分され、行政財産は一部の例外を除き原則として「貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、信託し、若しくは出資の目的とし、又は私権を設定することができない」(第18条第1項)とされている。

地方公共団体が保有する不動産に関しても、地方自治法の規定により同様の制約が設けられている。行政財産としての用途を廃止して普通財産に変更すれば処分が可能となるが(第20条第1項)、地方公共団体が国庫補助を受けて整備した施設であれば、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(通称「適化法」)の規定により、用途変更や処分の際に補助金を返還しなければならない場合がある(第22条、施行令第13条・第14条)。

他方、国の独立行政法人や地方独立行政法人の場合、上述した国有財産法や地方自治法の制約を直接受けることはないが、減損会計などの新たな企業会計手法が適用されれば、企業用不動産と同様、バランスシートのスリム化が求められよう。その一方で、法人設立に当たって設立主体から譲り受けた不動産を(例えばオフバランス化のために)処分しようとすると、当該不動産が「不要になった」とみなされ、設立主体への返還を求められることもありうる。

公的不動産というと、公共サービスの非効率性に対する批判的な議論から、つい「ハコモノ=無駄なもの」とひとまとめに括られがちである。しかし、マネジメントの観点からは、どのような団体がどのような形態で所有(または賃借)し、どのような目的に利用しているかを的確に把握し、その種類に応じた検討を行う必要がある。

表3 公的不動産に関する所有者の分類と主な団体

(4) 公的不動産が抱える共通課題

このように、公的不動産の種類は用途や所有者によって様々であるが、全般的に共通する課題を列挙すると、主に以下の通りである。

①厳しい財政事情と維持管理コストの増大
  国及び地方自治体の財政状況は近年ますます悪化しており、歳出削減を通じた財政運営の効率化が求められている。その一方で、戦後の経済成長にあわせて取得・整備を進めてきた公共施設の多くが老朽化しており、維持管理や改修に係るコストの増大が厳しい財政事情をさらに悪化させる要因となっている。

②社会情勢の変化等による稼働率の低下
  21世紀に入って我が国では人口減少と少子高齢化が進み、特に地方において顕著な傾向が見られる。このため、地方を中心に公営住宅や教育文化施設などの需要減少が進み、稼働率の低下が今後大きな問題となる可能性がある。一方で、高齢者福祉などの公共サービスの需要増加へどのように対応していくかが課題である。また、今後は市町村合併の進展に伴って公共施設の統廃合が進んでいくことから、廃止した公共施設とその敷地をどのように活用するかが課題と言える。

③行政組織のスリム化に伴う人材の不足
  国や地方自治体の厳しい財政事情を背景に行政組織のスリム化が求められ、公務員の定数削減が進んでいることから、公共施設の管理運営に十分な人員を割り当てることが困難となっている。加えて、いわゆる「団塊の世代」の大量退職により、これまで公共施設の管理運営を担ってきたベテラン職員の不足が懸念される。限られた人材を有効に活用して、公共施設を効率的に管理していくことが求められる。

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