CRE講座

2011/12/19 UP

東日本大震災に係る不動産の会計・税務

1.不動産の滅失・損壊に係る会計・税務処理

東日本大震災により、その津波の被害も含めて、不動産が滅失したり、損壊したりしたものが多く発生しました。不動産が滅失した場合、その事実に基づいて、固定資産滅失損失などの適当な名称を付した科目により、原則として特別損失に計上することになると考えられます。物理的に滅失している事実に基づいて、会計上、当然に損失計上の対象になりますが、税務上も同様に、その滅失の事実に基づいて、滅失損失がそのまま損金の額に算入されます。

また、建物等の損壊については、滅失損失と同様に、その未償却帳簿価額について損失計上を行い、税務上もその事実に基づいて、損金の額に算入されます。

1つ注意しなければならない点は、滅失にせよ損壊にせよ、その損失は、その事実のあった事業年度において損失計上することになり、税務上も、その事実のあった日の属する事業年度の損金の額に算入されることになる点です。税務上、その事実に基づいて、当然に損金算入されるものであるため、損金経理要件はなく、翌事業年度において計上漏れに気がついたような場合は、前事業年度の所得の過大計上について、更正の請求を行うことにより過納税額の還付を受けることが適切な対応ということになります。

なお、会計上は、この滅失や損壊による損失を震災関連費用などと合算して、「災害損失」等の科目で特別損失に計上することも認められます。

次のような特別損失の注記事例がみられます。

K社(平成23年3月31日決算・有価証券報告書より)

※7.災害による損失の内訳

災害による損失は、平成23年3月11日に発生しました東日本大震災による損害額を計上しており、内訳は、次のとおりであります。

たな卸資産廃棄損 702百万円
固定資産滅失・評価損 1,934百万円
固定資産解体・修繕費用 1,594百万円
その他 606百万円
4,838百万円

2.不動産の減損、評価損の計上

不動産が一部被災を受けた場合、それにより再使用ができない状態になったり、収益性が著しく低下するような場合も考えられます。そのような場合は、会計上、減損会計における減損の兆候に当たることが考えられますので、将来キャッシュ・フローに基づく減損の認識の要否の調査を行うことになります。その結果、減損損失の計上が必要になることも十分に考えられます。その場合は、減失損計上後の残った帳簿価額についても回収可能価額まで切り下げなければならないケースが生じ得ます。

同一物件について滅失損失と減損損失が
同時に発生する場合あり
同一物件について滅失損失と減損損失が同時に発生する場合あり

減損の兆候が把握されても、将来キャッシュ・フローの見積りによる厳密な回収可能性テストにより、減損損失の認識が必要ないと判断されれば、結果として減損損失は計上しないことになります。これに関連した事例としては、次のものがみられます。

N社(平成23年3月31日決算・有価証券報告書より)

長期性資産の減損に関する会計処理

(前略)
なお、平成23年3月11日に発生した東日本大震災による減損の兆候について検証した結果、固定資産の減損の必要性はないと判断しております。

一方、税務上は、法人の有する資産につき、災害による著しい損傷によりその資産の価額が帳簿価額を下回ることとなったことその他の政令で定める事実が生じた場合において、当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したとき、例外的に評価損の計上が認められます(法法33条2項)。被災により使用価値を喪失したようなものについては、税務上の観点からも、評価損の計上の検討を行う必要があります。

なお、会計上の減損については、減損の存在が相当程度確実となった事業年度において計上されるべきものです。また、税務上の評価損の計上についても、その評価損の事実の発生した日の属する事業年度において、損金経理を要件として、損金の額に算入されます。先の滅失損失、損壊による損失と異なる点は、税務上の評価損の計上については、損金経理要件が付されている点です。評価損の事実が発生した事業年度において、確実に損金経理を行っておく必要があります。翌期以降の損金としては認められない点に留意が必要です。

3.固定資産の修繕費等の原状回復費用の取扱い

被災資産の取壊しまたは除去のために要する費用、被災資産の原状回復のために要する費用(被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水または土砂崩れの防止等のために支出する費用を含む)、土砂その他の障害物の除去に要する費用その他これらに類する費用、被災資産の損壊または価値の減少を防止するために要する費用の取扱いが問題となります。

会計上は、発生主義の原則により、①将来の特定の費用または損失であり、②費用発生の起因となる事象が当期以前に生じており、③発生の可能性が高く、④金額の合理的な見積りが可能である場合は、災害損失引当金を計上しなければなりません。

それに対して税務上は、本来は債務確定基準により、翌事業年度に発生する見込みの費用について損金算入することはできませんが、今回の東日本大震災については特例的に「災害損失特別勘定」の繰入れにより、災害事業年度の損金の額に算入することができるものとされました。したがって、会計上、計上した災害損失引当金は、税務上も原則としてそのまま損金の額に算入されます。税務上、「災害損失特別勘定の損金算入に関する明細書」の確定申告書への添付が要件とされていますが、災害損失引当金等の流動負債として会計処理している場合であっても、その内容が災害損失特別勘定であり、その損金算入に当たって、明細書が添付されるのであれば、損金算入要件を満たすことになります。

固定資産の修繕費等の原状回復費用の取扱い

(注)費用の発生が災害のあった日から1年を超える場合は、延長確認申請の手続が別途置かれている。

次のような災害損失引当金の計上方法についての注記事例がみられます。

T社(平成23年3月31日決算・有価証券報告書より)

災害損失引当金

東日本大震災により被災した資産の復旧等に要する費用又は損失に備えるため当連結会計年度末における見積額を計上しております。

top
  • CRE講座 TOPへ
  • 目次に戻る
  • バックナンバー

法人のお客様へ 都市開発・不動産ソリューション・資産運用 トップ

CRE戦略支援についてのお問い合わせはこちら

  • 都市開発
  • オフィスビルのご案内
  • 開発プロジェクトのご紹介
  • 企画・開発/監理
  • 施工(建設工事・ビルリニューアル工事)
  • プロパティマネジメント
  • 不動産再生
  • 不動産ソリューション
  • CRE(企業不動産)戦略支援
  • CRE戦略とは
  • CRE戦略の必要性
  • CREマネジメントサイクル
  • M&A時代におけるCRE戦略
  • サービスのご案内
  • 戦略立案コンサルティング
  • CREXα(クレックスアルファ)
  • 賃貸等不動産コンサルティング
  • プロジェクトマネジメント
  • CRE SOLUTION Report
  • CRE最前線!
  • CRE講座
  • CRE SOLUTION Report不動産情報誌発行のご案内
  • 事例のご紹介
  • 遊休地の売却依頼に、操業中の工場売却を提案
  • 不動産価値を適正に把握することで、店舗賃料を削減
  • 遊休地に取引先の拠点を建設
  • 経営資源の観点から、不動産情報を一元管理
  • 旧本社跡地を高齢者向け賃貸住宅として再生
  • 査済証のない旧耐震建物を助成金対象へ
  • 不動産鑑定
  • 不動産仲介
  • 不動産証券化
  • 資産運用
  • 資産運用
  • 安心・安全への取り組み
  • 日土地のCRE戦略支援
  • CRE SOLUTION Report