CRE講座

2009/10/1 UP

第4回セミナー 国際会計基準の適用における課題ー日本基準との差異についてー

1.はじめに

企業会計審議会の取りまとめた「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」では、(一定の要件を満たした)一部の企業について2010年3月期からIFRSの任意適用を認めることが適当である旨が明記された。2012年をめどにIFRSを強制適用とするかを最終判断するという点は従来どおりである。日本基準とIFRSとの間には依然として重要な差異が残っており、それは今後適用していくうえでの大きな課題になりうるものである。本稿では、両基準の主要な差異について解説し、併せて実務上の課題を示すものとする。

2.両基準の重要な差異について

日本基準とIFRSとのコンバージェンスの進展により、両基準の差異は縮小する方向にはある。しかし、両基準の間には解消するにつき一定のハードルが存在しているものもある。両基準の差異のうち、特に重要なものについて取り上げるものとする。

(1)のれんの会計処理

日本基準においては、のれんは原則として計上後20年以内の期間で、定額法その他合理的な方法により償却しなければならないとされているのに対して、IFRSでは償却はせず毎期減損テストの対象にするものとされている。日本基準は企業結合後の期待収益とのれんの償却が期間対応するという点においては理論的に優れている面があると考えられるが、IFRSでは減損テストにより減損の必要が生じなければ資産として長期間残る結果となる。財務諸表に企業結合の成果が適正に表されるのかが問題となりうると考えられる。この差異は、コンバージェンスにおいても結論が容易に出せない論点と思われる。

(2)収益認識

物品の販売における売上計上基準が、日本基準とIFRSで異なっている。日本基準においては、実現の定義や収益認識に係る要件などについては直接の規定はないが、一般的には製品や商品の引渡しをもって収益の計上基準としている。「出荷基準」または「引渡し基準」を採用している企業が多いのが実情である。
それに対して、IFRSは、将来の経済的便益が流入する可能性が高く信頼性をもって測定できることを収益認識の基準としており、たとえば物品の販売については、表の5つの要件がすべて満たされたときに収益を認識するとしている。
通常は、物品の所有によるリスクおよび経済的便益の移転は、法律上の所有権の移転・買い手による占有とリンクするが、たとえば物品に係る重要なリスクを売り手に留保しているようなケースにおいては、法律上の所有権の移転や買い手による占有とリンクせず、収益も認識されないことになる。IFRS採用にあたっては、個々の取引の収益認識基準をその売買契約書や取引の実質等に照らして再検討する必要がある。場合により、「出荷基準」から「検収基準・到着基準」など他の基準への見直しが必要になることも考えられる(※1)。その場合は、システム変更の問題などが発生しうるものと考えられる。

図 5つの要

(3)固定資産の減損

日本基準では、いったん減損損失を計上したものについては、戻入れは認められない。一方、IAS36号では、のれんを除いて、減損損失の戻入れの兆候についての検討が必要とされている。したがって、戻入れが発生する場合もありうる。戻入れが必要な場合に、回収可能価額(使用価値または正味売却価額)を再計算しなければならないし、減価償却費の計算についても戻入れ後の帳簿価額に基づいて以後計算しなければならず、事務負担の増大が懸念される。

(4)包括利益計算書の作成

IFRSにおいては、包括利益計算書の作成が求められており、1つの包括利益計算書で表示する方法と、損益計算書と包括利益計算書に分けて表示する方法のいずれかを選択できるものとされている。また、包括利益計算書、損益計算書および注記のいずれにおいても、特別損益項目を表示することが禁じられている。 包括利益計算書を作成するための新たなシステム開発の問題も生じる。また日本基準では、臨時かつ多額の損益項目が特別損益項目として表示されることにより、経常損益が表示され、企業の事業活動に係る経常的な利益水準が把握できるが、異なる表示形式が採用されることでどのように財務分析を行ったらよいのかという課題も生じうる。

(5)キャッシュ・フロー計算書

日本基準では、キャッシュ・フロー計算書の作成方法として直接法と間接法(※2)のいずれかを選択できるものとされており、多くの企業が間接法を採用している。IFRSにおいても、2つの方法の選択が認められているが、直接法が推奨されており、義務化される方向にある。直接法を採用する場合、作成には困難を伴う場合も考えられ、場合によりシステム開発の問題も生じうる。

  • ※1:製品が買い手に到着してから検収に時間を要する場合があり、その場合は出荷段階において重要なリスクと経済的便益が買い手に移転しているのかどうかについて厳密な検討が必要であると考えられる。
  • ※2:直接法とは、主要な取引ごと(売上代金の受入、仕入代金や人件費等の支払)にキャッシュ・フローを総額表示する方法であり、間接法とは、税金等調整前当期純利益に、(減価償却費などの)非資金項目、営業活動に係る資産・負債の増減額などを加減算調整して、キャッシュ・フローを表示する方法である。
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